3. チャレンジのためのセーフティネット大胆な労働市場・社会保障制度改革


(1)総論

  1. 「チャレンジのためのセーフティネット」構築に向けて、給付付き税額控除またはベーシックインカムを基軸とした再分配の最適化・統合化を本格的に検討し、年金や生活保護等を含めた社会保障全体の改革を推進します。

(2)年金・社会保険・ 最低所得保障

  1. 社会保険としての受益と負担をバランスさせるため、受益(給付)と負担(保険料)を明確化し、適正な保険料の設定・適正な給付を実現します。
  2. 現行の公的年金を継続する場合は賦課方式から積立方式に移行し、原則として同一世代の勘定区分内で一生涯を通じた受益と負担をバランスさせることで、払い損がなく世代間で公平な仕組みを構築します。
  3. 最低所得保障制度(給付付き税額控除またはベーシックインカム)の導入に伴い在職老齢年金制度等を見直し、高齢者の労働意欲を削がないような社会づくりを目指します。
  4. 医療費の自己負担割合につき、年齢で負担割合に差を設けるのではなく、所得に応じて負担割合に差を設ける仕組みに変更します。
  5. 国民健康保険については、スケールメリットを活かせる広域的な運営を推進します。

(1)流動化・生産性向上

  1. 「負の所得税」同様の考え方を実現するため、給付付き税額控除あるいはベーシックインカムの導入を検討し、就労意欲の向上と雇用の流動化を図り、労働市場全体の生産性と賃金水準の向上を実現します。
  2. 解雇ルールを明確化するとともに、解雇紛争の金銭解決を可能にするなど労働契約の終了に関する規制改革を行い、労働市場の流動化・活性化を促進します。同時に、労働移動時のセーフティネットを確実に構築し、フレキシキュリティ(柔軟性+安全性)の高い社会を目指します。
  3. 法律施行後も実態が伴わない「同一労働同一賃金」を実現するため、国の責 務として、労働移動を阻害する年功序列型の職能給から「同一労働同一賃金」を前提とする職務給への転換を促進します。
  4. 「ジョブ型」雇用への転換促進のため、労働基準法を改正し、企業が労働時間ではなく仕事の成果で評価できることを可能にし、被雇用者を法的に保護します。
  5. いわゆる「エッセンシャルワーカー」を中心とする労働集約型の企業が持続・成長可能な税制を整備します。具体的には、被用者の待遇・賃金水準の向上を目指し、労働分配率の高い企業に減税などのインセンティブを講じます。

(2)雇用促進

  1. インターバル規制をはじめとするシニア向け労働法制の整備や、低賃金労働者等に向けた給付付き税額控除の一種である勤労税額控除の導入など、勤労インセンティブを与える仕組みを検討します。
  2. 深刻化する就職氷河期(ロスジェネ)世代の課題に正面から取り組み、非正規雇用者は柔軟で多様な働き方と再チャレンジができるよう、職業訓練や社会保障の強化を進めるなど環境を整えます。

(3)権限移譲

  1. 労働市場のニーズを踏まえ、公的職業訓練を徹底的に見直すとともに、ハローワーク(公共職業安定所)の国から地方への移管などにより、住居・生活・福祉などの支援を一体的に提供し、地域の実状や強みを活かした労働市場の創出を目指します。

(1)IT化・オンライン診療

  1. 迅速な医療情報の共有化により医療の質の向上や重複する処置の削減等を進めるため、電子カルテの標準化を促進し、普及率100%を目指します。
  2. レセプトチェックのルール統一を行い、国民皆保険制度の元でAIやビッグデータを活用することで、医療費の適正化と医療の質の向上を同時に実現します。
  3. 医療現場と患者の負担軽減や感染症対策のため、オンライン診療・服薬指導については診療報酬体系や利用要件のさらなる見直しを進め、安全性を確保したうえで、国民にとって使いやすいものにしていきます。

(2)制度改革・施策推進

  1. 患者や利用者がよく理解できるよう、診察報酬・介護報酬の決定プロセスを透明化し、その体系を簡素化します。
  2. 診療報酬について、現在の受診の量に応じた出来高払い(pay for service)の仕組みから受診の質・価値への支払い(pay for performance)への移行を進めます。そのため には不可欠なデータ活用については、電子カルテの標準化や電子処方箋の普及を通して医療情報のデータベース化を促進します。
  3. 医療保険に保険料割引制度を導入します。具体的には、定期的な検診受診者や健康リスクの低い被保険者などの保険料を値引きすることで、一人ひとりが健康価値を高める行動を起こすインセンティブを設けます。
  4. 地域における医療と介護の切れ目ないサービス提供ができるよう、在宅医療・在宅介護の質・量を高め、初めて経験する人でも安心して使える地域包括ケアシステムを構築し、医療・リハビリ・介護・福祉の連携によるいのち輝く未来社会を実現します。
  5. いわゆる「待機高齢者」問題等の介護施設不足の解決のため、介護サービスでの地方分権と規制改革を行い、ニーズを適時・的確に把握できる体制を整えます。
  6. 病気や要介護になることを防ぐ一次予防・健康増進を図るとともに、先進自治体のモデルの横展開を進め、介護予防・予防医療の取り組みを一層推進します。
  7. 介護と保育に関するニーズの変化に柔軟に対応するため、老人ホームと保育所を一体化させた複合施設の設置基準は、自治体が決定できるよう権限移譲・規制緩和を行います。
  8. 自立支援に軸足を置いた介護を推進し、またがん検診・特定検診の受診率を向上させ、健康寿命の延伸に注力します。
  9. 改正健康増進法の周知徹底を図り、受動喫煙防止の徹底に努めるとともに、屋外喫煙所のあり方を改善するなど、きめ細やかな受動喫煙対策を推進します。
  10. 認知症支援施策の充実を図り、高齢者とその家族が安心して暮らせる社会を実現します。
  11. 介護現場で働くすべての方の待遇・職場環境改善を行い、また、介護・福祉の現場で活用できるロボット開発・テクノロジー導入を支援し、介護人材への負担の軽減と職場への定着(離職防止)と成長産業化を図ります。

(3)尊厳死・平穏死

  1. 自己決定権の一部としての「尊厳死(平穏死)」について、賛否の意見を集めた幅広い議論・検討を率先します。

(1)法改正・分権

  1. 休業命令や経済的補償を付加したうえで都道府県知事に権限を移譲する新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正を行い、都道府県と国の合意形成に必要な手続きを整え、地方が地域事情に応じて機動的に感染症対応を行える体制を確立します。
  2. 道州制の理念の下、隣接都道府県では情報や医療資源の共有化をはかるなど、相互補助できる体制を構築します。
  3. 感染症法を改正し、国民が検査や医療を受けることができる権利を明確にすることで、安心して日常生活を送れる環境を整備します。また、「指定感染症」と昨今の医療提供体制・保健所体制が適正に両立して国民を守れるような仕組みを早急に確立します 。
  4. 感染症拡大局面において、災害派遣に関する自衛隊法の枠組みを活用し、全国あるいは地方ブロック毎に重症病床を融通し患者を配転する仕組みを整備します。
  5. 有事の感染症局面においては、一定の臨床的効果を確認した段階で治療薬の緊急使用を許可し、通常の治験手続きに囚われることなく治療の選択肢を提示できるようにします。
  6. コロナ禍において国民や企業の自粛頼みに甘んじ、実質的には法的根拠なく自由を奪ったと評価される事態に至ったことを踏まえ、有事の際の指揮命令系統等に関し、危機対応ガバナンスを確立するための法改正・憲法議論を積極的に行います。

(2)制度・予算

  1. 人員配置や設備面で急性期の受け入れ能力がない中小病院が過多になっている現状を精査し、医療提供体制の再編を強力に推進します。特に有事の際に保健所と開業医の協働が機能不全状況に陥ったことに鑑み、開業医(かかりつけ医 が入院判断などについて積極的に関与し、きめ細やかな指示を患者に行うなど、医療機関へ適切な要請・対応ができる仕組みを構築します。
  2. 国産ワクチンや治療薬の研究開発・生産体制について、大胆な投資を行うなど安全保障の観点から抜本的に強化し、実用化の際には十分な量が国民に確保・供給できる体制を確保します。
  3. 新型コロナウイルス感染症患者の受け入れ等により経営状況が悪化した医療機関に対する適切な支援を行い、持続可能な医療体制を構築します。
  4. 感染症の対応にあたる「日本版CDC」を首都圏と関西圏に1か所ずつ整備し、感染症対策を万全に行います。
  5. 市区町村や大規模会場、更には大企業の職域接種に加えて、商工会議所や協会けんぽとも連携した中小企業の職域接種も実施し、国全体でのワクチン接種を加速化させます。
  6. ワクチン接種を受けることができない者への不当な扱いを防止しつつ、ワクチンパスポートを感染防止措置の一環として積極的に活用します。